Psychic Denim

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恐怖!逆上するダメ人間!

 映画を盛り上げる最大の要素としてカタルシスというものがあります。主人公の何か抑えられていた感情が爆発し、その気持ちを誰かにぶつけたり自分の殻を破ったり。それは主人公の成長も表しています。しかし全く成長することなく開き直り、逆にハードコアな幼児退行として暴れるダメ人間も世の映画には数多く存在します。ダメなのにキレるので手のつけようがありません。どうしようもないです。しかしこういう映画に炸裂する負のパワーは現実の半端にダメな僕らに勇気と元気を与えてくれます。 底辺を見て励まされているのです。

ジャンルとしては『タクシー・ドライバー』や『天使の復讐』に近いものがありますが、彼らはあくまで狂人だったり精神的に失陥があったり、”ダメな人間”ではありません。そこでダメ人間の定義として、友人と仲良くできない、仕事ができない、実家暮らしをポイントに考えていきます。

ちなみにネタバレになってしまうので、ラストのブチ切れるシーンについてはあえてあまり言及してません。皆さんで見てみて楽しんでください。

 

『Buzzard』

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ーあらすじー

会社から勝手に小切手を盗んでいることがバレそうになり、ハゲの家に匿ってもらいながらゆったりかつヒリヒリとした無職ライフを過ごすも割と大変なことになる。

 

前作『Ape』もしょうもない人間がプチ爆発する素敵な映画でしたが、個人的にはこっちを推します。この映画の主人公のマーティは会社に遅刻し、まともに仕事もこなさないようなクズで、上司に怒られてもロクに聞かず、ハゲの友達と勤務中に駄弁りまくり。家に帰ると『バタリアン』などのホラー映画のポスターがベタベタ貼った部屋でゲームし、負けるとキレてゲームに八つ当たりするというどうしようもなさ。しかも会社のオフィス用品を盗んでリサイクルショップで換金、小切手までも横領しようとするウルトラ小物クソ人間っぷりはここで紹介する映画の中でもトップクラスです。f:id:marioncobretti:20170618214335j:image

こいつがそのマーティですが、この病的なふてぶてしさは目を見張るものがあります。ちなみに監督の動物三部作は全部こいつが主演です。

話はマーティが小切手の換金をしに銀行に行くことから本格的に転がり出しますが、ここでキーアイテムになるのがゲームで使っていたグローブ。大好きなホラー映画の『エルム街の悪夢』のフレディ・クルーガーよろしく爪をつけて改造し、これがラストに中活躍します。

そして最後は何か教訓や成長があるのかと思いきや全く反省の色がなく映画が終了するのも素晴らしいです。f:id:marioncobretti:20170618221558j:image

このシーンの『タクシー・ドライバー』感  

 

 

 

『オブザーブ・アンド・レポート』

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 ガキをぶん殴る『Foot Fist Way』でダニー・マクブライドと共に新世代コメディー映画界に仲間入りしたジョディ・ヒル監督作。HBOで放送されていた『EastBound & Down』のダニー・マクブライドも過去の栄光にすがる傲慢で下品な人間で最高でしたが、今作のセス・ローゲンもかなり終わってていい感じです。

 

ーあらすじー

セス・ローゲン扮する主人公のロニーは警察官になることに憧れており、たかだかモールの警備員のくせにさも警察であるかのように振舞っていた(うざい)。そんなある日モール内に露出狂が出現、これは警官になるチャンスだと仲間を引き連れてコスメ店員の女や刑事に邪魔されながらも我が道を突き進んでいく。

 

ジョディ・ヒルはなんとなくアパトーギャングの一味ように思われがちですが作風は全く違い、アパトー映画のような感動的なヒューマニティーは存在しません。その代わりブラックで暴力的、かつ冷ややかな眼差しが特徴です。『オブザーブ・アンド・レポート』は彼の長編2作目で、ショッピングセンター版『タクシー・ドライバー』と評されるのも納得の傑作です。

 セス・ローゲンといえば大体ぐうたらしているスラッカーっぽいイメージがありますが、この映画ではもっと病的な、いつもとは明らかに毛色が違う感じです。

あとキャストが地味に豪華。レイ・リオッタアンナ・ファリスマイケル・ペーニャとドラマ版『ファーゴ』 が最高だった”白いマット・デイモン”ことジェシー・プレモンスも登場します。しかしその豪華な出演者陣に反比例するような、明らかにメインストリームに乗らない内容と演出が独特の空気を生んでいて面白いです。実際大々的に公開したもののあまりヒットしなかったみたい。

 

 

 

『Zero Charisma』f:id:marioncobretti:20170618231927j:image

こちらも日本未公開。『ストレンジャー・シングス』の男の子たちもやってたファンタジーボードゲームをいい歳こいても母親に怒られながら実家でやり続けるオタク達のコメディ映画です。

ーあらすじー

ハゲかけた中年オタクの主人公がゲームマスターとして根暗たちは毎夜ボードゲームに勤しんでるのだが、そこにイケメンで彼女持ち、しかも人気オタクサイトの運営者という完全に鼻持ちならない野郎が混ざってきてから彼の天竺は崩壊する。

 

f:id:marioncobretti:20170618214833j:imageパワー系ジョン・C・ライリーみたいな顔をしたこいつが主人公です。どのアングルから見ても完全に不細工。めちゃくちゃおしっここぼしそう。

この映画の重要なポイントとして、どれだけ優しく接してくれる友人や家族にも強く当たる万年第二次性徴期な性格の問題があります。無職あるあるですね。この映画の主人公もその点においてパーフェクトで、凄まじいどうしようもなさに感動すること請け合いです。

 

 

 

 

『ザ・テロリスト』

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 今は引退したマスター・オブ・エラーことウーヴェ・ボルの最高傑作。この人の映画は打率が死ぬほど低いことで有名ですが、「俺の映画に文句があるなら直接言ってこいよ!」とガチギレ、実際の素人をボクシングのリングにあげてボコボコにするというこの記事にぴったりの精神的ゴリラです。そんな人間が撮っているのですから、その「本物感」は只者ではありません。

ーあらすじー

街に出て人をいっぱい殺す

 

この映画の主人公も例によって仕事ができず、喫茶店に行けば店員に怒鳴りつけ、しかも実家暮らしというダメ人間のロイヤルストレートフラッシュ。あまりの薄っぺらさにびっくりします。そんなゴミクズが街に繰り出してひたすら人を殺すというそれ以上でもそれ以下でもないストーリーもなんだか身も蓋もなくていいですね。ラストの取って付けたようなクソみたいな演説も本当にクソみたいで驚きました。

 

 

 

 

 


CLARK NAITO 「どうでもいい」

今回はこの曲でお別れです。彼の曲に共通する負に突き抜けるパワーは今回の記事にぴったり。腹が立ったら我慢するな!自分が悪くてもブチギレようぜ!